発行2003年12月15日
NO,22


今回はコンブの利活用特集です!来年度予算概算要求では豊かな海の森づくり事業に対し本格的に取り組む姿勢が見えてきました。この流れを更に大きくしていくため、地域ごとのコンブ等海藻の利活用方法の提案が大切になってきました。その方向性は1.健康食材として地域での消費2.魚介類の飼料として3.有機質肥料として農業利用4.工業製品としてなどが考えられます。地域ごとに大学等研究機関や漁協・農協・異業種交流会等とのネットワークづくりが欠かせないようです。

表層水温が高くても養殖できるこんぶを!  富山県水産試験場  2002/03

県水産試験場の科学技術特別研究員の松村航さん(32歳)は、富山湾の海洋深層水を利用して、こんぶの新品種を作り出す研究に取り組んでいる。同氏は、北海道大学の大学院時代にこんぶの細胞から細胞壁を取り去ったプロトプラスト(原形質体)を3〜7mの大型藻体に育てることに世界で初めて成功している。
 このプロトプラストの培養には、低水温が効果的であり、初期段階でいかに活性を高めて生存させるかがポイントとなっており、同氏は、低水温でしかも栄養豊富な富山湾の海洋深層水に着目し、クローン種苗を生産、増殖する技術の開発に取り組むことになったもので、関係者の期待も大きい。これまでの研究で、北方産のまこんぶの葉状部を10〜20pにカットし、深層水を使って流水式の屋外タンクで培養すると、2週間〜1か月で成熟することが実証済みであり、同氏は、「クローン化を応用してまこんぶやわかめなどから良い細胞を選抜して融合させ、よりよいこんぶを作り出したい。 また、深層水の水温や濃度などこんぶの培養に適した条件を探り、夏場に表層水温の高い富山湾でも養殖できるこんぶを目指したい。」と、意気込んでいる。現在は、稚苗10pのものが3か月後には約3mまでに成長するため、成長するまこんぶの葉状部を次々にカットして成熟させたり、また、あわびの養殖のえさ用こんぶとしても利用している。
  
連絡先:滑川市高塚364   富山県水産試験場  松村 航     (電)076-475-0036

 

歯舞産こんぶを使用した「こんぶエキス風呂」が好評   2002/03

根室市内で民宿を経営する板屋大介さん(39歳)が、平成13年8月に地元で採れるこんぶの新たな利用法を開発し、漁業関係者らから期待が寄せられている。
 同氏は根室産業クラスター計画のワーキンググループである「タラソテラピー研究グループ」に所属し、フランスなどで一般的に取り入れられている海洋療法(タラサ=海、セラピー=療法)の研究を重ねる中、美容を目的に海水や海泥、海藻が利用されていることに着目し、ふろの湯にこんぶを利用することを思いついた。
 同氏は、自ら経営する民宿に日帰り入浴もできる「こんぶエキス風呂」を開設し、こんぶ特有のぬめりを防ぐため、「歯舞産あつばこんぶ」から熱湯抽出したエキスを混ぜている。なかでもエキスの抽出効率の良い1等品を主に使用しており、新たなこんぶの利用法の開発により地域の活性化を図りたいとしている。
 こんぶエキスは、制菌作用や免疫力向上に効果のあるアルギン酸やフコイダンを多く含んでいることが北海道大学の研究でも明らかになっている。このエキスは保湿効果も高いため、入浴後はしっとり、すべすべになった肌の違いを実感している人が徐々に増えてきており、自然と調和しながら、海洋資源の恩恵を余すところなく受けるタラソテラピーで、漁業と観光産業、そのほかの産業などの連携を図られればと関係者は期待している。
  
連絡先:根室市敷島町2丁目64番地     板屋 大介     (電)076-475-0036


緑鮮やか昆布ラーメン開発         〔渡島・函館市〕
    −道南産昆布の普及に期待−
 函館市の(株)M製麺(岡田芳也社長)では, 水産王国函館にちなんで昆布を使った中華そばの試作に取り組んできた。しかし,めんに昆布粉を加えると黒ずんでしまうため,改良を重ね,ゆでても変色しないめんを開発した。
 このめんは,鮮やかな緑色の色合いと共に噛むと昆布の味がして, ツルッとした食感が売りで,昆布入りラーメンは冷麺以外では初めてとのこと。
 スープ味は,しょう油と塩の2種類で,商品には2食をセットし,更に,昆布エキス,酢昆布も添えるなど地域特産の昆布にこだわったものとなっている。1箱500円で函館市内の土産店を中心に,平成11年4月1日から販売を開始する。               
 同社は, 中小企業家同友会函館支部の「函館昆布研究会」にも参加し, 昆布の街函館の知名度アップにもつながればと話している。                           
 連絡先:亀田郡七飯町字中島13- (株)丸豆岡田製麺営業部長 市橋 幸雄  () 0138-65-8811

 

21世紀は、海藻資源利用の飛躍の世紀

日本海藻協会事務局長 大野正夫

海藻は国際的な食品素材
日本人の多くは、海藻を食するのは,日本,韓国など限られた国と思っているが,フ ィリピン,ハワイや南太平洋のサンゴ礁海域の国々のひとは,緑藻のイワズタをサラ ダ風に食べており,南アメリカのインデオは,岩海苔の繁茂期の春に、山から海岸に 下って、波のあたる岩場でノリを採取し,石鹸のように固めて保存し肉炒め料理など に使い,ビタミン・ミネラルの補給として珍重してきた。そのために、甲状腺異常な どの内陸地方に多い風土病が皆無であった。最近、欧米では日本食がレストランか ら家庭の食事のなかに入りつつあり,ワカメスープや海苔巻きが好まれるようになった。ケープタウンの国際海藻シンポジュウムの展示会場で,アフリカ諸国の研究者と 海藻食について討議したが,アフリカでは、今まで海藻を食べる慣習がなかっただけ で,海藻を食べることは,それほど抵抗はないという。海藻食は,これから世界的に 健康的な食品素材として,家庭料理に浸透してゆくことが期待される。日本の海藻食 品業界が、海藻食の啓蒙を国際的に積極的に進めることが、海藻食の国際化につながる。


海藻の有効成分の商品化
今回の国際海藻シンポジュウムでは,海藻の有効成分の報告が数多くなされたが,海 藻成分を利用した薬剤、ドリンク剤や健康食品が,今世紀には、さらに一般的になってくるのではないだろうか。1970年代から,海藻に抗がん作用,抗酸化作用,抗 アレルギー作用を持つ成分が多く報告されているが,これらを含む商品開発が遅れて いる。最近,合成産物の危険性が問われるようになり,天然物成分の利用が広まりつ つある。海藻の有効成分の商品開発には,大きなリスクが伴うので遅れているが,最近は,このような開発には,政府の補助金制度があり,複数の会社の共同開発も考えられるであろう。


寒天・カラギナン・アルギン酸の利用分野の新規開発
1950年代からの寒天・カラギナン・アルギン酸の利用開発は,海藻工業の中核と なり発展してきた。これらの海藻粘質多糖類の生産は,国際競争が著しくて,ぼんやりとしていると,すぐにつぶされる厳しい業界である。今世紀は,これらの新しい利用分野の開発が期待されるが,日本の大学研究室では,海藻粘質多糖類の分 野の研究者が少ない。
 国立大学も独立法人化になり,民間会社と協力体制が期待されている。今後、強力に 産官学協同研究を盛り上げて,海藻利用研究では、日本が世界をリードせねばならないであろう。